| 陸上競技の指導実践論 |
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結果がねらい通りでなければ、そこまでの過程において間違いがある。 |
スポーツにおいて、正しい動きを覚える方法はたくさんある。 私は特に、場の設定を大切に考える。 場の設定とは、どんな不器用な選手でも、正しい動きを自然に覚えられるような、環境（場）を設定することである。 たとえば、走り幅跳びを例にしてみよう。 走り幅跳びで、一番重要なポイントは、踏切のリズムと飛び出しの感覚である。 指導者の中に「踏切は、空気の階段を上るように踏み切る。」と言う人がいる。 これは、その指導者のイメージである。 このイメージは万人が理解できるものではない。 「場の設定」を工夫するには、道具が必要である。 この場合、踏切板と跳び箱を準備する。 この二つの道具を使って、踏切をさせるのである。 ほとんどの選手が「階段を上るように」踏み切れる。 慣れてきたら、跳び箱をはずし、次に踏切板をはずせばいい。 選手は自然の動きで、助走→踏切準備→踏切→空間動作と覚えていく。 また、踏切板を使うことで、高さを確保でき、空間での足の回転が容易になる。 さらに、踏切位置に足がぴったり合わせる感覚も自然に身につく。 このように、「場の設定」を工夫することが、正しいフォームを身につけさせるには非常に有効な方法である。 |
| ハードルの技術のポイントは、何であろうか？ 私は、「切れのある３歩のりズムがもっとも大切である」と考えている。 場の設定では、ハードルの高さとインターバルの長さが重要となる。 普段の練習において、「試合のリズム」でハードルを行う。 正規の高さ、インターバルでは、試合のリズムで走ることは出来ない。 練習においては、疲れた状態で何本も走るのであるから、当然、ハードルは低くして、インターバルは短くして行うことが、重要である。 あくまでも、リズムは試合のリズムである。 そのリズムを確認するには、なにを尺度にするか？ ５台のハードルを、跳び終えるタイムを尺度にするのがわかりやすい。すなわち、１台目を踏み切る時から、５台目を跳び終える間でのタイムを測定する。具体的には中学生で４秒台であれば、相当レベルが高い。 |
走り高跳びの練習で、第一に考えなければならないことは、安全性である。 背面跳びの場合、マットから飛び出してしまえば、大怪我をしてしまう。そこで、踏切板を利用すれば、踏切位置がきまり、自ずと着地の範囲も特定される。 マットも常時グランドに設置することで、出し入れの面倒さから解放される。タイヤをならべ、その上にマットを置き、シートをかぶせておけば、見た目にもよい。 さらに、踏切板の利用は高跳びのフォームを身につけるには、非常に効果的であり、絶対にと言って良いほど必要である。 クリアランスを覚えるには、高さが必要である。 踏切板を利用すれば、自分の実力の１０ｃｍから２０ｃｍ上の高さを跳ぶことが出来る。 踏切板での練習は１ｍ７５ｃｍぐらいまでは、問題なく練習が出来る。それ以上の高さになると、踏切板の利用は、あるいはマイナス面がでてくるかもしれない。 とにかく背面跳びのフォームから覚える初心者には、絶対に必要な場の設定である。 |
砲丸投の練習において工夫する場の設定は、砲丸の重さである。 スタンディングでの投げとグライドでの投げの時の砲丸の重さを変えるのである。 スタンディングでは助走スピードが無い分、体全体のバネを使って投げるため、正規の重さより、いくぶん重い鉄球を使用する。下半身の使い方を覚える。 一方グライドでの投げの時は、正規の重さより、いくぶん軽めの鉄球を使う。 これは、試合場でのスピードと投げる距離に近づけるためである。 すなわち、練習中でも、試合感覚で行うためである。 中学男子であれば５ｋｇ、４．５ｋｇ、４．０ｋｇ、３．５ｋｇ、３．０ｋｇの５種類の重さの鉄球を、その日の疲れ具合、練習のねらいに応じて使い分ける。 中学女子であれば、３．５ｋｇ、３．０ｋｇ、２．７２ｋｇ、２．５ｋｇ、２．２ｋｇの５種類の鉄球を用意する。 次に、場の設定とは違うが、砲丸投げで注意することは、投げのリズムである。 グライドはゆっくり、投げは速くのリズムで投げることが大切である。 多くの選手は、グライドは速く、投げはゆっくりの逆のリズムになっている。 グライドを速くする練習を多くやっているのを見かけるが、走り高跳びの助走を全力疾走しているのと同じことである。 砲丸投げでの助走スピードを上げればあげるほど、体さばきが難しくなって、失速してしまっている。 |
筋力トレーニングが日本に紹介された時は、最大筋力（マックス）でのトレーニング法であった。 そのためジュニア選手に筋力トレーニングを行うものは誰もいなかった。 また、中学生に筋力トレーニングをさせていると非難された。 日本で最初にジュニア選手に筋力トレーニングをさせたのは、当時の埼玉県浦和市の常盤中の監督であった大森先生（現京セラ監督）であった。 筋力トレーニングも最大筋力ではなく弾力的トレーニングであった。 内容は続けて１０回ぐらいできる重さのシャフトを使用してのトレーニングであった。 腹筋・背筋・ステッピング・ジャンピング・カール・プレス・歩行スクワット等、ユニークな基礎的な運動であった。 シャフトの重量も３ｋｇから２０ｋｇぐらいの負荷であった。 たとえば中学１年生の女子で３ｋｇのシャフトを用いて、腹筋を行う場合、１０回を３セット行う。 １ヶ月ぐらいトレーニングを続けると、今度は５ｋｇに負荷をあげる。 徐々に負荷をあげていくと、中学３年生ぐらいになると、１５ｋｇで３セットが出来るようになる。 今では全国どこの学校に行っても鉄の棒がおいてある。 それを正しく有効に活用することが大切である。 ポイントはスピードと徐々に負荷を上げていくことである。 腹筋の場合、上げるときに全力で速いスピードで行い、降ろすときはゆっくりのリズムである。 また、おなじ重さでやっていたのでは、筋力は強くならない。 さらに、シャフトを用いての筋力トレーニングの良さは、たくさんの人数で一斉に行うことが出来ることである。 高校生でも非常に有効である。 トレーニング室でマシーンを使って行う場合、少人数で行う場合は有効であるが、５０名が一斉にできるほどの施設を持つ高校は少ないだろう。 特に、身体の要である腰を強くするには、腹筋・背筋を日頃からしっかり鍛えておくことが重要である。 １０ｋｇから２０ｋｇのシャフトで十分に鍛えることが出来るのが、シャフトを用いての筋力トレーニングの最大の良さである。 |
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